ネットテクニック

2010年7月26日 (月)

英政府サイトも炎上 衆愚を排し、集合知を得るためのテクニック

 英政府が歳出削減のアイディアを募るためtにつくったサイト「http://spendingchallenge.hm-treasury.gov.uk」が炎上により閉鎖されてしまった。閉鎖理由は突拍子も無いアイディアや一部国民に対する誹謗中傷などが殺到したためで、移民や低所得者への差別発言などもあったようだ。

 この手のトラブルは今後のオープンガバメントを目指す人にとって最も重要な課題である。日本でも公職選挙法の改正にともなう国家議員の勉強会で誹謗中傷やなりすましにならんで炎上が恐いという意見もあったことなどから、意図しない議論が完全にコントロールできない状態になることへの不安はどの国でも共通なようだ。

 しかしネットを介したオープンガバメントへの志向は今後強まることが予想され、炎上しない構造をつくることは必須になるであろう。

 多くの提案を集めようとすればするほど「ろくでもない意見」も多くなる。これは現実社会も一緒で、某首長に話しをうかがったところ「陳情は毎日沢山うけるが、ほとんどがろくでもない、必要の無い陳情」とのことであった。行政のコストの大部分はこの「陳情」に費やされているという実体も有り、リアル・ネットの境無く、如何に必要な情報を吸い上げ、いらない意見を排除するかは、行政の効率化に関しての重要項目であるといえる。

 この「陳情コストの削減」と「良い意見を効率よく集める」をネットを介して上手にやったのが米国サンタクルーズ市である。サンタクルーズ市は財政破綻を機に「heard your voice」 というサイトで意見を募集した。意見募集のためにネットを使うというところまでは良くある施策なのだが、募集した意見をネットで公開し、意見が妥当かどうか、市の施策として取り組むベキかどうかをネット上で投票させ、投票の上位ランクのものを施策として実施という取り組みをした。上位ランクには素晴らしい意見が多くこれにより行政の財政が健全化している。「より多くの人が納得できる意見は案外素晴らしい意見だ」という集合知の理論が働いた好例ともいえよう。

 もちろん意見の下位ランクはもちろんとんでもない意見ばかりなのだが、これらは投票で排除されるほか、いままでリアルで受け付けていたこれら無駄な意見陳情をやらなくて済むようになったことで、行政の時間的コストの削減につながったという副次的な効果も生まれている。

 日本でも文部科学省がやっている「熟議」など、オープンガバメントを志向した施策があるが、担当者曰く炎上しないサイトらしいが、炎上しないのはつまるところ盛り上がっていないというのが実情といえる。 英国のように盛り上がりすぎて炎上状態になってしまうのも困りものだが、サンタクルーズの施策のように少し工夫するだけでよい議論が行われることもある。

 衆愚の危険性は民主主義国家なら常に抱える危険性であるが、それを集合知にするための工夫はいくつも存在する。英国のような失敗もあるが、今後10年20年のなかでさらに良い仕組みの提案があるだろう。そうであるからこの失敗にめげず、各国政府・行政体はいろいろなトライアルをすべきである。
  
 
 

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2010年6月23日 (水)

朝日新聞「コブク郎」にみるキャラクターを活用した企業・自治体広報

 最近企業や自治体関係者から「ネットを利用した広報活動はどうしたらいいか」という相談を受けることが多い。私からは1つの提案として「キャラクターに喋らせればいいんですよ」と応えている。

 企業・自治体の多くでも広報手段の1つとしてネットに注目があつまっているものの、充分なノウハウがないために二の足を踏んでいるところが多いようだ。特にネットに関してはネガティブな情報(炎上等のトラブル)が先行して伝わってしまっていることもあり「トラブルが恐い」という理由で躊躇してしまっているところもある。先日も某自治体の偉い方とお話しする機会があったのだが、かなり優秀な方であったのだがやはりネットを利用した(特に最近のバズワードであるtwitter)広報について、どうしたらいいか思案中ということであった。

 企業・自治体野中では意欲的な取り組みをされているところがいくつかあるが、最も成功し、他の模範となるものの1つが朝日新聞東京本社の報道局・編成局が利用しているtwitterアカウントのキャラ「コブク郎」(http://twitter.com/asahi_tokyo)であるといえよう。

 朝日新聞といえばその信頼性ゆえにネットではよく叩かれることが多く、どちらかといわれればネットでは嫌われ者であった。ただし、朝日新聞社そのものの潜在能力は高く(日本で最初にネットでニュースを配信したのは朝日である)、一部の人を除けばネットに理解のあるメディアの1つといってよい。twitterに関しても意欲的にとりくんでおり、各テーマ・セクションごとに公式アカウントを持っている(参考

 この中で最も人気のあるものの1つがコブク郎である。フクロウのキャラクターが時事ニュースなどを紹介しているサービスなのだが、このコブク郎の特徴的はキャラクターを生かした情報発信・受信ができているということだ。

 新聞社の堅いイメージからはかけ離れ「ですます調」でニュースを要約したり、ユーザー視点でニュースのポイントを示したりしている。またコブク郎あてにメッセージをすると丁寧な言葉で返事をするなど、いままでのマスメディアにありがちな一方的な情報発信ではなく、ユーザーとフラットな関係での情報発信・受信ができているところが画期的で、多くのユーザーから支持をされている。

 またリスク回避の視点からみれば、コブク郎というキャラクターを介す事で法人が発しているメッセージであるにもかかわらず公式発表としてとらえられない。たとえばコブク郎がなにか間違ったコメント(たとえば社の方針とはちがうコメント、または単純に打ち間違いなど)をしてしまったとしても、あくまでコブク郎というキャラクターが勝手に喋っているというスタンスをとれる。さらには多少ドジなキャラクターという設定をしておき、常日頃からユーザーとの信頼関係を築いておけば何かあっても「間違っちゃいました、えへへ」で許されてしまうのは大きなメリットだ。

 他にもキャラクターによる情報発信で成功した例がいくつかあるが、朝日新聞をとりまく一種の逆風の中、多くの支持を集めているという意味でコブク郎は注目すべき存在である。毒舌キャラでもいいし、常にドジをするキャラでもよい。または萌えキャラでもよいし、イケメンキャラでもよいと思う。多種多様な価値観が入り混じるネットコミュニティにおいて、その「輪の中」に入っていくためにはユーザーとフラットな関係を築いていくことが重要で、その意味でもキャラクターを介したコミュニケーションは今後の主流の1つとなるだろう。

 コブク郎はその成功例の1つであり、今後も企業・自治体広報の見本として注目をしていきたい。
 
 

 
 
 

 

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